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天然ガス投資の基礎知識

天然ガス投資の基礎知識

天然ガス投資を始める前に、押さえておきたい基礎知識をまとめました。


米国産天然ガス市場について

1980年代以降、欧米ではガスの小売市場自由化などに伴い、天然ガスの先物市場が発達してきました。米国では、1985年にパイプラインへのオープンアクセスが奨励され、メキシコ湾で生産された天然ガスの取引量が増加。

1990年には、メキシコ湾から全米各地に輸送されるパイプラインの結節点となっている、ルイジアナ州ヘンリーガス処理施設における取引価格を指標として、ニューヨーク商品取引所(NYMEX)に「ヘンリーハブ 天然ガス先物」が上場されました。

2010年台に入ると、シェールガスの生産も本格的に始まり、2019年の米国のパイプライン経由の供給量は、28.3兆cfに達しました。


一方で、LNG(液化天然ガス)の輸出が本格化し始めたのは、2016年以降です。

LNGは、天然ガスをマイナス約160℃で冷却し、液化したものです。体積が気体の約600分の1となり、輸送・貯蔵に便利となりますが、冷却や関連設備の整備、輸送などにコストがかかるため、LNGは気体の天然ガスと比べ、価格が高くなる傾向があります。

2018年頃までは、アジア向けの輸出がメインでしたが、2019年以降は欧州向けの輸出も増え、特に欧州などが寒波・熱波に見舞われた2021年には、米国はカタールやオーストラリアと肩を並べるLNG輸出国となりました。


主要国LNG輸出量の推移(EIAより)


天然ガスの「需要」について

天然ガス相場で最も特徴的なのは、米国内での需給がメインで、他の国・地域の動向の影響を受けにくい、ということです。米国内の生産・消費・備蓄の材料で、ほぼ値動きが決まってくるという点で、他の商品とは少し異なっています。

米国産天然ガスの需要は、2021年時点で、国内消費が生産量の約84%を占め、輸出需要は増えてきたとはいえ、約16%にとどまっています。

したがって、天然ガス相場を考える際には、まず国内消費の動向をチェックする必要があります。

米国内では、天然ガスは発電用の燃料としての需要が最も多く、全体の約40%を占めています。次いで多いのが産業用需要で、ここには化学物質や肥料、水素を取り出す材料としての需要が含まれます。

また、冬季には家庭用や商業施設用の暖房燃料としての需要が大幅に増え、全体の需要を押し上げる傾向があります。


米国内消費量のセクター別内訳(EIAより)



国内消費量のグラフを見ますと、米国内の天然ガス需要は、冬季にピークを付けるパターンが毎年はっきりと確認できます。

価格も気候の影響を受けやすく、天然ガス先物価格は冬季(厳密には、思惑で動きやすいため、冬本番前)にピークをつける傾向が見られます。また、厳冬になると冬の天然ガス需要は大きく増え、価格はより上昇しやすくなる傾向があります。



天然ガスの「需要」について②

国内消費がメインとはいえ、天然ガス相場における輸出需要の重要性も、徐々に高まってきています。

パイプライン経由でのカナダ・メキシコ向けの輸出も増加傾向が見られますが、特筆すべきはLNG輸出量の急速な増加でしょう。

ただ、米国産LNGに対する需要が大幅に増えているにもかかわらず、液化能力の不足が足かせとなり、LNG輸出を一定量以上に増やすことが難しいのが現状となっています。

新たな液化施設の建設申請・着工も進んできていますが、2023年中は頭打ちとなり、生産能力がさらに上乗せされるのは、2024年以降となる見通しです。


米LNG輸出能力の推移(EIAより)



さらに昨年は、米国の液化能力の約2割を占めるフリーポートLNGの液化プラントが、6月の爆発事故以降数か月にわたって停止し、長期間にわたって輸出需要が下押しされる形となりました。

天然ガス先物価格も大きく下押しされ、事故後1か月で、高値9.664ドルから、安値5.325ドルまで、大幅に下落しました。

フリーポートLNGは、2023年4月にはほぼフル稼働に戻りましたが、季節的な要因も相まって、天然ガス価格は2ドル前後で推移しています。


天然ガスの「供給」について

米国の天然ガス生産量は、近年、大幅な増加傾向が続いています。2022年のドライガス生産量は、日量約981億cfに達し、前年比で3.7%増となりました。

4月のEIAエネルギー短観によりますと、2023年の生産量は、日量約1009億cf、2024年には同1016億cfと、さらに増加する見通しとなっています。

EIA天然ガス生産量の推移と見通し


ただ、2023年に入ってからの天然ガス価格の低迷により、生産が控えられるのではないかとの見通しも出てきています。実際に、新たなガス井を掘るガスリグの稼働数は、頭打ちとなっています。




天然ガスの「貯蔵量」について

季節による需要の大幅な変動に合わせ、春・夏・秋に在庫を積み増し、冬に取り崩すという形で、在庫量の変化にも季節性が出やすくなっています。



在庫が多ければ、需給が緩んでいる、少なければひっ迫していると考えられますが、天然ガスの場合は季節変動が顕著で、単純に在庫量の水準だけでは買い材料・売り材料の判断がつきにくいため、5年平均との差が注目されることが多いようです。



5年平均を下回っていれば、どちらかと言えば買い材料、上回っていれば売り材料と見られる傾向がありますし、その差の拡大・縮小も材料となることがあります。天然ガスの在庫=貯蔵量は、毎週木曜日に、EIAが前週末までのデータを発表しています。





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